今日のアストルティア

アクセスカウンタ

zoom RSS 花の乙女が出来るまで 3

<<   作成日時 : 2016/11/20 10:45   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像


 俺は、元殺し屋。名前はまだない。
 行き倒れている俺を踏みつけた、不運な旅人ヒューイットの家に居候している。
「ベッド、買おうと思うんだけど」
「……? あるだろ?」
「キミが寝てるじゃん。ソファは身体痛いからもうやだ」
「なら、一緒に寝ればいい」
「はぁ!?」
「ベッドは大き目だから、二人でも寝れるだろう?」
「……ヘンなことしない?」
「お望みなら」
「おおおお望みじゃありません!!」
 ぶんぶん、と音がしそうな勢いで、首を振られた。顔真っ赤だぞ、経験ないのか。
「心配しなくても同意が無い行為には及ばない」
「……どっちでもイケる人なのね」
「仕事を完遂するために必要なことなら何でもやったからな。元々の性癖だったかは判らないが、今更抵抗はない」
「そっか」
 望んでなった訳でもないが、そこまで悲壮な顔をされると困るな。話題を変えるか。
「ベッドを買うのはいいが、何処に置く気だ?」
「うっ」
「広いとは言えないスモールタワーの2階全部バスルームにしているくせに」
「ううう」
「一緒に寝るよな?」
「……ハイ」
「いい子だ」
「いい子って、居候のくせに態度がデカイよ!」
 冗談でも出て行けとは言わない。お人よしすぎるヒューイット。この場所は居心地がいい。他愛ない会話も、暖かなベッドも、美味しい食事も…。
「ちょっと待て」
「何?」
「これは、何だ」
「魚」
「魚は見れば判る。そうじゃなくて、何故、焼き魚なのか聞いている」
「焼き魚、嫌い?」
「……論点をすり替えるな。俺が言っているのは、昨日も一昨日もその前も焼き魚だったってことだ」
「い、一応、昨日は塩味で今日は黒胡椒だよ」
「今まで何食って生きてきたんだ…?」
「生で食べられるもの多いから! 冒険中は携帯食だし、街には料理屋さんあるし」
「ウェディが魚捌けないとかマジかよ」
「(厳密にはウェディじゃないもん)」
「判った、次からは俺が作る」
「え」
「居候させてもらってるんだし、それぐらい当たり前だ」
 料理が出来ないなら、早く行ってくれればいいものを。
「ご飯作れるの…!?」
「一応な」
「お願いします!」
「おう」
 ここでは、自然と笑える。
「俺にも出来ることがあってよかった」
「器用だよねえ」
「おまえが出来なさすぎなんだと思うが」
「う」
「まあ、冒険者は忙しいよな」
 ひとまず、家の中のことは引き受けることにした。

「待て待て待て待て! 寝癖のまま出掛けるんじゃない!」
「えー、いいよ。気に」
「しろ! 曲がりなりにも参内するんだから、身嗜みは当たり前だろうがっ!」

 俺は、元闇組織の殺し屋。名前はまだない。
 拾われた恩返しに、ヒューイット宅にてオカン業邁進中(不本意)
 

 ある日の午後、客人の来訪を告げるチャイムが鳴り響いた。
「ヒューイ、こんちはー」
「あいこさんに帽子さん、いらっしゃーい」
 エンゼル帽をかぶった、白いプクリポがにこにことドアを開ける。どうやら、ヒューイットのフレンドらしい。
「…紅茶でいいか?」
「うん、帽子さんにも淹れてあげてね」
「帽子さん?」
「オレだよ、オレ」
 どうやら、このエンゼル帽は喋るらしい。初めて見た。
「アップルパイは好きか?」
「アップルパイ!」
(好きらしいな)
 温めなおしたアップルパイにアイスクリームを添え、紅茶と共に饗する。
「ヒューイはすごいな、もうぷらこん雇ったのかー」
「ぷらこん?」
「ぷらいべーと・こんしぇるじゅだろ? その人」
 びしっ、とエンゼル帽に指される。
「家持ってないと雇えないもんな」
「ああ、うん。いいでしょう、料理も掃除も得意なんだよ」
 ヒューイットは話に乗る形で誤魔化すことにしたようだ。
(行き倒れてた元殺し屋を踏んで拾いましたとは言えないしな)
「このアップルパイ、すごくウマイよ!」
「…よかったら、持って帰るか?」
「いいのか!?」
「ああ、ご近所さんから大量にリンゴをもらったんだ。ジャムもある」
 エンゼル帽はキラキラしながら、ヒューイットを振り向く。
「ヒューイ、本当に良いぷらこん見つけたなっ」
「うん、ありがとう」
「うちにも、こんなぷらこんが来るといいなー、あいこ」
 こくこくと白いプクリポが頷く。
「もうじき、あいこも家を買う予定なんだぜ」
「いいね、念願の我が家だ! …あれ、もしかして家に来てくれたのって」
「そうそう、ヒューイん家のハウジング見に来たんだ!」
「うちでよければ、隅々まで見てくれていいよ」
 それから一頻り、あいこ達は家の中を見て回り、土産用に包んだアップルパイとりんごジャムを持って帰っていった。
「ありがとな、ヒューイ」
「またいつでも遊びに来てねー」
 にこにこと客人を見送るヒューイットの背中を、ぼんやり窓から眺める。
 いつまでも、このままで居られると思っていた訳ではないが、具体的な展望をわざと考えないようにしていた自分に驚く。
(いつの間にか、こんなにも)
「アップルパイ、好評で良かったねー。料理上手だから」
 戻ってきたヒューイットを、玄関先で抱き締めてみる。
「あああぇおおおおお!?」
 色気のない意味不明な悲鳴が上がって、じたばたしている。
「何なに、どうしたのっ」
 がっちり抱え込んでいると、やがて諦めたように俺の肩先やせなかをぽんぽんと軽くあやしてくれた。あたたかな手。やさしいヒューイット。
 本当は、俺はここに居るべきではない。
 どう考えても、俺の経歴はヒューイットの迷惑にしかならない。判っている。
(でも、俺はここに居たい)
 ヒューイットの傍に居たい。今と同じように、これからも。
(いつの間にか、こんなにも執着していた)
 この場所に。
 ヒューイットの明るくて綺麗な家に、汚れた灰皿みたいな俺は似つかわしくないけれど。もしも、変われるのなら。
(違う、仮定じゃない。必ず変わってみせる)
「ヒューイって」
「ん?」
「ヒューイって呼んでた」
「ああ、オレの名前、ちょっと長いから」
 仲良しのフレさんとかは、略して呼んでもらってるんだよ、とヒューイットは笑う。
「ヒューイ」
「うん?」
「ヒューイ」
「うんうん、何?」
(俺は、アンタに相応しいものになりたい)

 その為のヒントを、もらった気がした。


 名前の無い彼が、不意に家を出て行った。
 気が付いたら居なかった。
(さすが元殺し屋。気配消すの上手すぎでしょ)
 彼が姿を消したと気付く前に、テーブルの上に置かれた短剣を見つけていたので、心配はしなかった。
 ここ数日、何かを思い悩んでいるようだったから、きっと、彼なりの答えを見つけたんだろう。そして、この短剣は、帰って来るつもりの意思表示。
 刃が波打つ、フランベルジュ形式のえげつない短剣は、彼の命懸けの相棒の筈だ。
 それを預けて行った意味が、判らないほど鈍感でもない。
「待ってるよ」
 だから、早く帰っておいで。

「そうじゃないと、御飯が美味しくないっ」

 作り置きの料理が大量に残されてる毛と、やっぱり違うんだよなあ。
「ひとりで食べても、つまんないよ」
 だから、早く。
「帰ってきてよ」
 この家へ、オレの隣へ。

 花の乙女が出来るまで、まとめ3。
 お題の消化にてこずって、長くなりました。まとめにあたり、加筆修正しております。
 使用したお題は、以下の通り。
「汚れた灰皿」
「やっぱり違う」
 今回、フレンドのあいこさんと帽子さんのキャラをお借りしました。ツッコミ役+プラコンの職業のヒントをくれる役回りで、どうしても登場して頂きたかったので、お願いしました。あいこさん、快諾くださって、ありがとうございました! なるべくイメージを壊さないよう頑張ったつもりですが、あの可愛らしさの再現は難しかったです。あいこさんの「ゆきのふるひに」は素敵な素敵なお話ですぞー!

 腐れた妄想を含みます。お嫌いな方は御注意ください。
 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
花の乙女が出来るまで 3 今日のアストルティア/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる